第3章 失われたもの

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「やっ、こっち見ないでってば!」 「そんな心配をしている場合ではなかろう!」 頭の上からイブの非難を浴びながら、ヌマクラはするすると登っていく。 あと少し。 ヌマクラの指が、黒いブーツの先を掴もうとした、その時。 ぐぱ。 「?」 足元で変な音がした。 聞いたことのない、くぐもったその音に、僕は足元を見下ろす。 「ひいっ!」 と、同時に有り得ないものを見てしまった。 足元の砂がいつの間にか消え去り、そこに巨大な穴が開いていた。 それだけじゃない。 空いた穴の真ん中には、長い鎖を触手のように動かす、筒状の魔物の姿。 こいつの腕、だったんだ。 魔物は鉛色で、外皮は鎧みたいなものが何枚も重なって段になっていた。 しかも、とにかくでかい。 僕の家なんかまるごと飲み込めるくらいの大きさだ。 魔物は、体と同じくらい大きな口を上向きに開け、ギザギザした刃を不規則に動かしながら、イブとヌマクラが落ちてくるのを待ち構えていた。
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