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「やっ、こっち見ないでってば!」
「そんな心配をしている場合ではなかろう!」
頭の上からイブの非難を浴びながら、ヌマクラはするすると登っていく。
あと少し。
ヌマクラの指が、黒いブーツの先を掴もうとした、その時。
ぐぱ。
「?」
足元で変な音がした。
聞いたことのない、くぐもったその音に、僕は足元を見下ろす。
「ひいっ!」
と、同時に有り得ないものを見てしまった。
足元の砂がいつの間にか消え去り、そこに巨大な穴が開いていた。
それだけじゃない。
空いた穴の真ん中には、長い鎖を触手のように動かす、筒状の魔物の姿。
こいつの腕、だったんだ。
魔物は鉛色で、外皮は鎧みたいなものが何枚も重なって段になっていた。
しかも、とにかくでかい。
僕の家なんかまるごと飲み込めるくらいの大きさだ。
魔物は、体と同じくらい大きな口を上向きに開け、ギザギザした刃を不規則に動かしながら、イブとヌマクラが落ちてくるのを待ち構えていた。
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