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「なになに~、『足が犬並みに速いゾンビ』……?」 背後から声がした。 振り返ると、ベージュのカーディガンの首から下がったネームプレートが目に入った。 「黒木先生、見ないでよ!」 萌は口を尖らせノートに覆い被さる。 「ふふふ、土谷さん面白いね」 黒木はそう言って、ワンレンの艶のある黒髪を肩の上で揺らした。 黒木は司書で、ほぼ毎日図書室に来る明梨と萌によく話し掛けてくる。 まだ20代だという黒木は歳も近いという事で話しやすく、明梨と萌は姉のように慕っていた。 「また小説書いてるの?」 「コンテストに応募するんです」 萌が答えると、「へぇ」と黒木は微笑んだ。 「完成したら、黒木先生もマイフェバに読みに来てください」 萌の言葉に、黒木は首を傾げる。 「萌、黒木先生は携帯小説は読まないよ。海外文学専門だから」 「そんなことない、最近は何でも読むよ」 黒木は顔の前で白い手をヒラヒラと泳がせた。 「土谷さんも水田さんも、携帯小説だけじゃなくてたまには違う作品を読んでみるといいよ。勉強になるから」 「黒木先生、お勧めの本ありますか?」 どうしても大賞が取りたい明梨は、黒木の好きな本を文章の勉強の為に読みたいと思った。 「そうだなぁ、ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』かなー」     
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