袖香る少将 一

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 蔵人少将源明衡(みなもとのあきひら)は清和源氏の流れを汲む名門の出で、帝の信任も厚く、同年代の若公達の中では群を抜く出世頭だという。  姿も良く歌才もあり、年頃の姫を持つ家からは恰好の婿がねとして引く手あまたなのだとか。    どんな女でも望むがままの貴公子が、権大納言家の姫を最適の妻と見定めたのか、それともうわさの美女をたわむれに手折ってみるつもりなのか。 「図々しいわね。誘う女がかたはしからあなたになびくと思ったら、大間違いよ」  楓子もにこっと勝ち気そうな笑みを浮かべた。  そして青い薄様を裏返し、そこへさらさらと和歌を書き付けた。
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