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「まあ、たしかにつまんないお歌よね。基義さまは宮中でもちょっと冴えない方だってうわさも聞いてるし、この歌もどうせおそばの女房か誰かが代作してるんでしょ。それでこの程度なんだから、かなり問題よ。そんな役立たずばっかり抱えてる主人の器量も知れるっていうもんだわ」
でもね、と峯子は意味ありげに含み笑いをした。
「太政大臣の息子を逃がすほど、わたし、ばかじゃなくってよ。あの若さで宰相中将、参議の地位ももう目の前だし、姉君は今上さまの後宮で一番時めいてらっしゃる麗景殿(れいけいでん)女御、静子さまよ。中将さまのもとへは、黙ってたって大臣の座が転がり込んでくるはずよ!」
「まあ、そうでしたの」
楓子はぼそっと気のない返事をした。
実際、峯子の婿が大将だろうが大臣だろうが、楓子には何の関係もないのだ。
せいぜい、峯子が正式に婿取りをしたら、自分のところへ持ち込まれる縫い物がまた増えるだろう、そのくらいしか思わない。
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