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誤解です、北の方さま。私は本当に大切な話があって……」
「まだこんな娘をおかばいあそばすのですか、少将どの! あなたは何もおわかりではないのです! 我が家の事情に口をお出しにならないでくださいまし!」
「教えてさしあげればよろしいのよ、お母さま」
高く澄んだ声が響いた。
人垣を押しのけ、顔の前に形ばかり扇をかざして、峯子が進み出てきた。
「峯子、あなたは下がっていなさい!」
「この娘がどんな生まれの娘か、全部少将さまにお教えすれば良いのよ、お母さま。そうすれば少将さまだって、これは一時の気の迷いだったとすぐにお気づきになられるわ」
取り澄まして峯子は言った。ちらりと楓子を見やる目つきには、猫が鼠をいたぶるような残忍な喜悦が満ちている。
「そりゃあ我が家の恥を打ち明けることになるけれど、少将さまは他人の秘密をもらしたりなさる方じゃないわ。それよりは、真実を知っていただくことのほうがずっと大切よ」
「峯子……」
まだ返事をしかねている母親を押しのけ、峯子は明衡の前へ進み出た。
「少将さま。この楓子はわたくしの従妹、母の異母妹の娘ですの」
媚びるような峯子の猫なで声。
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