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#04 矛盾
その昔、A国には何でも貫ける槍があった。
その昔、B国には何も通さない盾があるという噂があった。
何でも貫ける槍は文字通り何でも空を突くように貫くことができた。
黒い柄、石突には赤い帯、柄よりも太い穂先の豪華な槍だった。
何も通さない盾は今のところ何も通したことの無い盾だった。
表面は鏡のように輝き、縁には金の装飾の付いた豪華な盾だった。
ある日、槍を持つ男と盾を持つ男が出会い、槍と盾どちらが正しいのか試すことになった。
最初は盾を持つ男の勝ちだった。相手の槍の柄を弾いたのだ。
槍を持つ男が言った。「それでは意味がないだろう、槍と盾どちらが正しいのか試すのだ」
盾を持つ男が言った。「なら戦う必要はあるまい、盾の上から槍を落とせばいい」
槍を持つ男は盾を持つ男の言うとおりに試した。
落とされた槍は地に置かれた盾を貫いた。
槍は失われ、A国はB国に侵略された。
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