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声の温度 濱田卓
一通り仕事を終えると、思わぬ好成果に大樹さんは気を良くしたらしく、俺を飲みに誘って来た。
明日休みだし?大樹さんなら奢りだし?
行くっしょ。コレ。
「美味い肉食べれるトコあんだけどさ、ちょいラブホ街なんだよなー。」
「美味い肉の後に、デザートで俺食えば?」
「ばかじゃねーの?デザートどころか、つまみにもなんねー事言ってんじゃねーよ。」
豪快に笑う大樹さんに少し残念。
残念?
ジョーダンで誘えば乗って来て、また後ろで気持ちよくなれるかも、なんて俺はフシダラなんだろう。
俺はただ後ろで気持ち良くなりたいだけなんだろうか?
いや。哲太じゃなきゃ嫌だ。
哲太を思い出すから他の事を考えようと思うのに
やっぱり胸ん中いつまでも刺さったトゲの正体は哲太だった。
大樹さんとくだらない話をしながら店へ向かうも、そこ辺りは哲太と良く合ってたラブホ方向で……
胸はやっぱりチクチクする。
「大樹さーん。俺の悩み聞いてもらえます?」
「んあー?毎日グダグダウヂウヂしてる卓の悩みなんか聞きたくもねーけど?まあ、仕方ねえ。何がお前をそんなにしてっか、店着いて三杯目のビール飲み終わった頃位から聞いてやるよ」
「聞く気ねーじゃんそれ!」
俺の肩に腕を回しガハハと笑う大樹さん。
払いのけようとしたその時いきなり手首を引っ張られてガクンと頭がのけぞった。
「て、哲太?」
何も言わずにグイグイ手を引っぱる哲太。
大樹さんがおい!卓誰?知り合い?俺との飲みはー?
って叫ぶ声がどんどん遠くなる。
に、肉がーーーっ!ご褒美の肉が遠のく……
なんて思いながらも哲太に、会えたのが嬉しい俺。
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