7.椿

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7.椿

なあ、知っているか? 桜の木の下に死体を埋めると花が綺麗に色付く――とは言うが、それは椿も同じらしい。錦がそう教えてくれたよ。 おっと、危ない。 何を逃げようとしているんだ? ・・・ああ、腕がもげてしまったな。でも、これはもう要らないから良いだろう? 要らないだろう? 要らないんだよ。 だから逃げるなって。駄目だろう、まだ話は終わってないんだから。 なあ、俺の兄弟は美味しかったか? 美味しかったんだろうなぁ。あれだけむさぼりつくしたんだから。 でも駄目だよ。あれは俺のものなんだから。 ああ、こら、暴れるな。 ・・・仕方ないな。 足ももいでしまおうか。 汚いなぁ。どうするんだ、この血だまり。 俺は汚いのが一番嫌いなんだ。 あ? 泣くなよ。それじゃまるで俺が悪人みたいじゃないか。 痛い? 知るか、そんなの。 ・・・ああ、ああ、うるさい。耳障りだ。 もう黙ってくれないか。 ・・・よし。静かになった。 もう口を開くなよ。これ以上汚れるのは、ごめんだからな。 ふふふ。 ああ、楽しみだ。 楽しみだ。 楽しみだなぁ。 なあ。椿は美しく咲くのかな? それとも所詮はお前のもの、醜く咲くのか? いずれにしても――楽しみだ。 いずれにしても――無様なことだ。 さあ、 君の花を、見せてくれ。
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