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9.次男の恋愛譚 ――幸せの叶え方――
君に一目惚れしてから、色々考えたんだ。
俺は今まで、何人もの人を好きになった。勿論、全て本気の恋だよ。
でも、結果は全て失敗に終わった。皆俺から離れていくか、壊れてしまうんだ。
だから、どうしたらこの恋が成就するのか考えてみたんだよ。
それでな、思いついたんだ。
俺は生者で、彼女達は死者。
これが、いけないんじゃないかって。
同じ土俵に立たなければ駄目なんじゃないかって。
でも、死者が生者に変わることはできないだろ?
だけど、生者が死者に変わることは簡単だ。
そう。
俺が死ねば良いんだよ。
・・・でもな。
俺は、寂しがり屋なんだ。
一人で死ぬのは、あまりにも寂しすぎる。
だから――
君にも一緒に、飛んでもらおうと思って。
二人でなら、寂しくはないだろ?
――ああ、気付いてくれたのか。
そうだよ。ここに来たのは、それが目的だ。
君が飛び降りて死んだこの場所で、一緒に死にたいんだ。
・・・どうした?
何をそんなに、怯えているんだ?
こらこら、逃げるなよ。
全く、悪い子だ。
さあ、まずは手本を見せてくれ。
二度目なんだ、簡単に出来るだろう?
大丈夫、すぐに後を追う。安心してくれ。
震えているな。そんなに嬉しいのか?
俺も、嬉しいよ。
ほら、手を広げて。
綺麗に足を揃えて。
大きく、息を吸い込むんだ。
目を閉じて。ああ、そんな汚い声を出さないでくれ。君のあの美しい声が聞きたいんだ。
さあ、
幸せに、なろう。
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