1.エピローグ 覗き返すもの

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血の臭いが強くなる。 闇が濃くなり、足元は再び血の海で覆われた。 俺はもう二度と離さないように、ハルの手をしっかりと握りしめる。 ――ハルもまた、強く握り返してくれた。 そうしてまた、俺達の周りに、奴等が現れる。 こちらを怨めしそうに見つめる、子供の影。 ギョロギョロと動く小さな目玉。 狂ったようにゲラゲラと笑うワンピースの女。 静かに佇む顔の××人。 引きちぎられた西洋人形。 姿の見えない、蝉のような悲鳴。 ご馳走を探し求める畜生達。 背後をついてくるナニカ。 肉片を零し続ける長身の女。 三人の赤子にすがりつかれた、憐れな少女。 落ちていく、美しく愛おしい少女。 そして、グチャグチャになった老人の頭。 他にも沢山の怪異が蔓延る中を、俺達二人は、どこまでも歩いていく。 この美しい世界を、歩いていく。 赤子が泣いた。 ワンピースの女が哄笑を上げる。蝉に似た悲鳴が一段と高くなり、長身の女の呟きも大きくなった。愛おしい彼女も何か言ったようだったが、残念ながら聞き取れない。 そうして――光が見えてきた。 俺達が帰るべき世界が見えてきた。 早く帰ろう。愛する兄弟が待っている。 元の場所に帰って、目が覚めたら、またいつもの日常に戻れることだろう。 奴等の盛大なファンファーレの中、俺達二人は、赤黒く光るそれに身を投じた。 ――今日もまた、平凡な一日が、始まる。
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