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2.さんちちょくそう
家の冷蔵庫に、買った覚えのない肉が入っている。
簡素な紙に包まれた、まだわずかに血の滴る、新鮮そうな肉だ。
兄弟に訊いてみても、誰も買った覚えがないと言う。不思議な話があるものだ。
さて、これをどうしよう。
折角だから、何か作るとするか。
という訳で、素材の味を生かせるようにステーキにしてみた。
余分なものが多くて取るのに苦労したが、脂がよく乗っていて、我ながらとても美味しそうにできたと思う。
けれど、兄弟は誰も食べてくれなかった。
長男には、「なんかよくわかんないけど食べたくない」と言われてしまった。
末っ子には、「そんな気持ち悪いの食べられない」と言われてしまった。
三男に至っては、何も言わず吐かれてしまった。
折角作ったのに、残念だ。
仕方が無いから、一人で食べよう。
兄弟には凄い剣幕で反対されたから、タッパーに詰めて、どこか違う場所で。
だって、勿体ないからな。
とはいえ、いくらよく食べる俺でも、四人分を一人で食べるのは少々心もとない。
という訳で、隣に住む幼馴染のところへ行くことにした。
「――いらっしゃい。あ、それが言ってたステーキ?」
玄関から顔を覗かせた幼馴染が、手元のタッパーを興味深そうに見下ろす。
「ああ。良かったら一緒に食べようと思って」
「食べる食べる! あ、先に席に着いてて。僕、皿とか用意しておくから」
「悪いな、頼んだ」
タッパーを受け取り、幼馴染は意気揚々と台所へ向かっていった。
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