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「えええええええ、めちゃくちゃ美味しいじゃん!」
ステーキを頬張り、幼馴染が目を輝かせる。
「あはは、ありがとう」
「お前、料理上手いもんな。シェフにでもなれば良いのに」
「兄弟以外に料理を作る気は微塵も湧かないなぁ」
「このブラコンが」
悪態を吐きながらも、幼馴染がステーキを口に運ぶスピードは変わらない。どうやらお気に召したようだ。俺自身も勿論味わっていたのだが、なかなか美味しくできたと思う。
「あいつらも薄情だね、こんなに美味しいのに食べないなんて」
「まあ、そういう気分じゃ無かったんだろ」
「贅沢者め・・・。ところで、さ」
付け合せの人参やポテトまでも綺麗に平らげながら、幼馴染は不思議そうな顔で尋ねてきた。
「今更だけど、これ、何の肉なの? あまり食べたことが無い味がするんだけど」
「ああ、それが俺にもよくわからないんだ。ただ、産地だけは書かれていてな」
肉を頬張りつつ、包み紙にひらがなで書かれていた文章を思い出す。
「『静岡産です』、だそうだ」
その時、何か固いものを噛んだ。
幼馴染もそうだったようで、苦い顔をする。
二人で口の中の異物を取り出すと、それはよく見なれたものだった。
薄紅色の、小さな板。
「・・・爪だな」
「・・・爪だね」
「そういうことか」
「そういうことだね」
俺達は小さく頷きあうと、それを近くのゴミ箱に投げ捨て。
また、肉片を口に運ぶのだった。
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