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3.見えるべきものが見えないということが見える話
ある休日の朝、兄弟の頭が無かった。
首から上が、スッパリと切断されてしまっていた。
最初こそ驚いたものの、その首無し三人が平然と兄弟の声で挨拶をしてくるので、俺は安心する。
顔を洗い、リビングに集まって席に着くと、一斉に手を合わせる。いつもと同じ光景だ。
兄弟の頭が無いことを除けば。
しかし、どうやって朝食を食べるつもりだろう。疑問に思って見詰めていると、なんと箸の先のおかずは、弟の口の辺りでグチャグチャになった。
そしてそのまま、血肉の見える首の切断面の中へと、ボタボタと落ちていく。
成程。これは面白い。
「・・・何」
ジッと見ていたせいか、不機嫌そうな三男の声が響いた。それと同時に、首の切断面からゴポリと血が噴き出す。これも面白いなと思いながら、俺は笑ってごまかした。
どうやら頭の件は、俺にしか見えないらしい。長男は言わずもがなだし、三男も今回は全く見えていないようだ。
末っ子だけは、「なんか皆の顔がぼやけて見える」と目を擦っていた。もしや目が悪くなったのかと不安がっていたので、「大丈夫だろ」と言っておいた。
大丈夫、目が悪くなったんじゃなくて、元々頭が無いだけだ。
その日俺は、首を無くした兄弟と共に過ごした。
何も困ることはない、兄弟の頭が無い以外は、至って普通で平和な一日だった。
首の無い長男に絡まれて、首の無い三男と買い物に行って、首の無い末っ子に勉強を教えた。
買い物中、通りかかったある人が三男を見て悲鳴を上げるというアクシデントがあったが、あれはなかなか腹が立つ。偶然見えてしまったのだろうが、人の弟を見て悲鳴だなんて失礼じゃないか。
俺の弟は、首が無くとも可愛いのに。
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