1.次男の恋愛譚 ――盛り塩――

3/3
前へ
/14ページ
次へ
翌日、俺はそのことを三男に話した。 「しっかしさぁ、最恐だと思ってたけど、やっぱアイツも人間だったんだねぇ。ちょっと安心したわぁ」 最後にそう締めくくると、何故か三男は物凄く嫌そうな顔をした。 「・・・それさ、違うと思うよ?」 何がだと訊こうとして、気付く。 弟の顔が、青ざめている。 「盛り塩はさ、確かに魔除けになるよ。でもそれは、あくまで〝外から入ってくるもの〟に効くだけなんだ。 だからさ、あらかじめナカに入っているものには効果が無い。代わりに――どうなると思う?」 三男は、苦々しく吐き捨てた。 「――閉じ込めてしまうんだよ、幽霊を」 そして、俺は気付いてしまった。 次男の、本当の目的を。 三男は――静かに、首を振った。 あれから、次男は元気になった。 女の話はしないままだが、以前よりも、ずっと機嫌が良いように見える。 女はまだ、弟の部屋に縛られているのだろうか。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加