2人が本棚に入れています
本棚に追加
3.ロープ
兄弟でキャンプに行ったら、とんでもないものを見つけてしまった。
テントの近くの大木に、先を輪にしたロープがぶら下がっていたのだ。
それを見て、勿論俺達は固まった。
ご丁寧に黒ずんだ何かをオプションに付けているそれは、どう見てもアレを連想させる。
「・・・い、いやあ、何だろうなこれ! 最新の飾りかなぁ!」
「・・・そうだね、随分と斬新な飾りだね」
冷や汗をダラダラ流す俺と三男の会話に、末っ子が恐る恐る口を挟む。
「ていうか、これって・・・」
「「言うな!」」
慌てて二人で口を塞ぐと、不本意そうにしながらも末っ子は黙ってくれた。
言うな、何も。俺達だってわかってる。
しかしそんな俺達の努力を無駄にする奴が、うちの兄弟には居た。
「何だこれ、首を吊ったのか。邪魔だな」
「「冬樹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」」
絶叫する俺らを余所に、次男は涼しい顔でロープに近付く。
「これ、取るか」
「は!? 正気!?」
「俺はいつでも正気だ」
「「ダウト!」」
またしても綺麗に声をハモらせる俺達を無視して、次男は本当にロープをほどきにかかった。
しょうがなく俺達は諦めて、大人しくその光景を見守る。
「うわあ、よくやるよアレ」
「な。まあ、使用中でないだけマシ・・・か・・・?」
自分で言っておきながら、なんだか渇いた笑みが漏れてしまった。
「・・・違うよ」
それまで無言でロープを見詰めていた末っ子が、突然口を挟んだ。
「違う?」
「何が?」
不思議がる俺達に、末っ子はロープから目を離さないまま、青ざめた顔で答える。
「違うよ。まだ居るんだ。
二人には見えないだけで、」
「――あの人はまだ、あそこで首を吊っている」
「「――え、」」
愕然とする俺達の耳に、次男の「ああ、やっと下ろせた」という呑気な声と共に。
ドサリと、重たい何かが落ちる音が、届いた。
最初のコメントを投稿しよう!