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「だってあの子、トオルに気があったみたいだったわよ? ハルに妬いてたもの」
「そうだよ。オレあの子に何度も睨まれてさ。あの後引導渡したの?」
ハルは恋人と仲直りしたらしく、シンに寄り掛かかっている。
「いや。
そうじゃなくて、あいつにどうするか選ばせてる」
納得いかないような顔をしているママとハルに透は事情を説明した。
常連客も含めて皆興味深そうに話を聞いている。
「トオルも素直じゃないね。
付き合ってって言ったら、案外簡単に落とせたかもしれないのに」
「けどそれじゃ流されてるだけだろ?
俺はあいつにしっかり考えてもらいたかったの。
男同士で付き合う意味をさ」
「それで連絡が無いって落ち込んでるんだから、トオルもバカだねえ」
皆言いたいことを口にする。
だが透は嘘も隠し事も無いこの雰囲気を気に入っていた。
「あー、じゃあ、あの賭けはヨシの一人勝ちかあ」
「それはまだ分かんないよ」
「何だよ? 賭けって」
常連の呟きに透が反応すると、皆それを誤魔化そうとし、先程の会話となった。
「トオルは本当に不器用なんだから」
常連相手に笑顔を浮かべている透にママは小さな声でそう溢し、溜め息を漏らしたのだった。
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