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翼はイライラしていた。
毎日の様に
「特に何も」「そっか」
と意味のない電話をし合う事に。
……そろそろ終わりにしないと。
そう思っているのに「もう電話しない」と言えない自分にもイラついていた。
何か切っ掛けになるものが欲しい。
それも向こうに「それじゃ仕方ないな」と思わせるような理由を。
本音を言えば、透の事をイヤだと思った事はなかった。
寧ろどんな人物なのか気になり、会いたいと思ったことも一度や二度じゃない。
上からの物言いも多かったが、時折優しい言葉や、こちらが照れるような言葉を掛けてくれる事もあったからだ。
……ゲイなんだから当たり前か……。
あの飲み会の後
「その人絶対にお前に気があるって」
だの
「優しくされても勘違いするなよ?
相手はゲイなんだから」
だの
「まだオカマ掘られてないだろうな?」
と周囲から揶揄された。
それが透と一層距離を置きたくなった原因でもあった。
オレに気がある、って会った事もないのに?
顔くらいみたいと思うけど……。
イヤイヤ、相手は男が好きな人だ。
もし会って変なこと言われたら?
体に触れられたら……?
ああ!
オレが付き合えるのは女だけだと分からせてやればいーんだ。
そうすりゃムダな電話も止めるだろうし、会わなくても済むだろう。
……でもホントにどんな人なんだろう。
顔だけでも見たかったな…。
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