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『オレね、元カノとやり直すことにしたから』
その言葉に胸が深く抉られた。
瞬時に来る時が来たと思った。
透は動揺したのを知られたくなくて、今日二度目の深呼吸をする。
「そっか。
今度は長く付き合えるといいな」
『うん。だから』「なら翼の恋が上手くいくよーに応援させてよ」
『ええっ!?』
「最後にメシくらい奢らせろよ」
こんな風に諦め悪く少しでも繋がろうとするなんて、透自身思ってもいなかった。
『え、でも……』
「いいだろ? メシくらい。
別に変なことするつもりないし。
お前が不安なら夜じゃなくて昼に会うのでどーよ?」
必死だった。
一度だけでいい。
お前の笑った顔を見せて。
それだけで俺は……。
『いや、でも』
「ホントに何もしねーよ?
俺ヤクザじゃないし、ゲイだから。
ノンケに手なんか出さねーよ」
『ああ、うん。だけど……』
「翼、男なんだろ?
こっちが何もしないって言ってんだから、男らしく奢られなよ。
好きなもん、腹一杯食べていいからさ」
『あー分かったよっ!そこまで言わたらしょーがねーから奢られてやるよ。
ただし腹一杯喰ってもオレは割り勘にしないからな?
後で足りませんって言うなよ?』
「よく言った!
好きなだけ食いな。
じゃあ、いつにする?」
翼からOKの返事を引き出し、透は笑顔になった。
ただ掌には、
汗をびっしょりかいていた。
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