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「あー、そこ右だったのにー」 「あっ、すみません。 って、江布さんが変なこと言うからじゃないですかー」 「俺はただどう思う?って意味で聞いただけじゃん。何動揺してんだよ?」 ニヤニヤしている江布を横目で見て、揶揄われたのだと気がついた。 「動揺なんてしてませんよ」 「ふーん♪ あ、その先二つ目の信号右に曲がって」 「はい」 「見積書持ってきたよな?」 「はい」 間もなく花形商事に着き、担当者に挨拶を済ませた後は、江布が雑談を交えながら営業トークをしているのを隣に座って聞いていた。 へー。江布さんて普段は適当な感じなのに、仕事では細かい所まで見てるんだ。 車に戻れば「何の話してたか分かった?」と翼に質問し、間違っていれば「違う違う。そうじゃなくて─」と丁寧に教えてくれて、合っていれば「良くできました」と笑顔で褒めてくれた。 同期の仲間が「江布さんって面倒見が良くて面白い」って言っていたのが分かった気がした。
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