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透はタバコを口に咥えるとライターの火を当てながら軽く息を吸った。
そして「フーッ」と息を吐き出しながら、この数ヶ月のことを思い出していた。
「……向こうから一緒に暮らしたいって言われたけど、俺、いいよって言ってあげられなかった。
そうしたら本気じゃなかったんだね、ってさ」
透の話を聞くと鈴木は何か考えるように一点を見据えて直ぐに言葉を返さなかった。
そして透が二度目の紫煙を口から吐き出した時、彼は静かな声で言った。
「椎(シイ)さん、だったっけ?
優しい人だったよな。
お前が子供みたいな我が儘言っても、微笑んでいたっけ」
「ああ……」
「少なくても俺はお前が本気だと思っていたけど?」
「本気だったよ。
けど、な…………いざ一緒に暮らしたい、生涯を共にしたいって言われたら躊躇っちゃって。
いいともダメとも答えてあげられずに3ヶ月……。
3ヶ月だぜ?
会えば必ず、どうするの? どうしたいの? って。
最初こそ「ゆっくり考えて」って言ってくれたけど、最後の方は俺のこと冷たい目で見てたよ。
当然抱き合うこともなくなったし、キスどころか手も触れなくなった。
結論を聞くためにだけ、俺と会ってた」
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