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「今からでもやり直すこと考えないのか?」
鈴木が店の主人から受け取ったハイボールを透の前に置きながら聞いた。
「んー……」タバコを灰皿に押し付けて火を消しながら、透は少しだけ考えた。
「いや、無理だな。
椎さんの事は好きだけど、生涯を共にするなんてのは考えられないし。
それ抜きにやり直そうって言われても、一度そういう目で見られたって事実がやっぱり重いんだよな」
「そうか……。
けど椎さんみたいな人が現れる可能性は、次は無いかもしれないんだぞ?」
「分かってるよ。
でも俺はもう吹っ切れたし。
別に特定の人と付き合わなくたっていいし」
「そこなんだよなー。俺が心配するのは。
その場限りの付き合いなんて虚しくない?」
頬杖をついて鈴木が透を見た。
「べっつにぃー。
お互い割りきってるから気を遣わなくていいし。
ラクでいいよ」
そう言ってハイボールを美味しそうに口にする友を見て、鈴木は溜め息を吐いた。
「お前がその気になりゃ恋人なんて直ぐに出来そうなのに。
なー、お前が本気になる基準てなんなの?」
鈴木の言葉に透も真剣に考えてみた。
が、出てきた言葉は
「……さーなー……。
俺を熱くさせる何かがあるか、ないかってとこかな?」
そんな曖昧な言葉だった。
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