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「おーい、日月商事からの電話とったヤツー?」 「リーダー、3番に山川さんからです」 「営業行ってきまーす」 「AB技研のカタログ持ってきてー」 毎日が慌ただしく過ぎて行く。 透も例外ではなく、自社のカタログは勿論、メーカーから貰ったカタログを常に机に置いて右手にペン、左手は受話器を耳に押し当て朝から晩まで客先からの問い合わせに答えるべく奮闘していた。 「フーッ」 シャワーを浴び終えると、いつもの癖でテレビを点けた。 見たい番組があるわけではなかった。 透は音のない静かな部屋が好きではなかったからだ。 そのまま冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、プルタブを開け一気に半分ほどを口にする。 テレビから女性タレントのキャーキャー言う声が流れていた。 『トオル。テレビ見ないんだったら消しなよ。 電気代勿体ないよ?』 いつも弟を諭すように優しく微笑んでくれたっけ……。 透は別れた恋人を思い出していた。 ……もし俺が椎さんに「いいよ」って答えてあげられたら、今頃二人で笑っていたんだろうか…………。 スマホが鳴り出したのは、そんな時だった。
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