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─そんな事ない!
翼はサワーを口にしつつ、心で叫んでいた。
─透さんから気持ちが離れるなんてないんだ!
翼の睨むような眼差しを受けながら鈴木は続ける。
「もしそうなった時、あいつには止める術がないからね。
金井にとって男性と恋愛するのが自然なように、翼君は女性と恋愛するのが自然な事だからさ。
これはあいつも考えてると思うよ。
だから翼君がOKと返事をしても、金井は二の足を踏むかもしれない」
「……何でそんな事言うんですか?
オレたちの力になってくれるって言ったのに……」
射るようにきつい光を放っていた翼の目が、悲しそうに伏せられていった。
だが鈴木は、これだけは伝えなければと考えていたのだ。
「もちろん二人の事は応援してるし、力になるって言ったのも嘘じゃないよ?
ただね、こういう事も起こり得るって言いたかったんだ。
翼君。
もう一度良く考えて。
今目の前にある気持ちも大切だけど、この先もずっと金井だけに心を寄り添っていけるのか。
後悔したりしないのか。
しっかり考えて出した答えが翼君の為だけじゃなくて、あいつの為にもなるからね」
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