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透が住んでいるワンルームマンションは、最寄り駅から歩いて20分のところにある。
近くにバス停があるがバスを利用するのは老人くらいで、その付近に住んでいる人は皆徒歩か自転車を使っていた。
透は徒歩だった。
居酒屋で飲み過ぎたため、いつもより時間をかけて帰ってきた。
ややふらつく体を叱咤し、4階の自分の部屋にたどり着くと直ぐにスマホを取り出しベッドに寝転んだ。
酔っているためいつもより強めに電源ボタンを押し、画面が明るくなると通話マークをタッチする。
普通なら短縮した設定から電話を掛けるところだが、大学からの親友である鈴木の番号は頭の中に入っていて、番号をタップする方が早かった。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル…………。
呼び出し音が虚しく鳴り続けている。
一度切りリダイヤルする。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル…………。
今度も出ない。
少しおいてリダイヤルする。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル…………。
「チッ」
相手が出ないことに苛立ち舌打ちする。
だが酔った透はしつこかった。
更にリダイヤルした。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル…………。
『……はい!?』
何度目かのコールの後、苛立った声と共に通話が繋がった。
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