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一週間後の金曜の夜、透は鈴木と共に居酒屋にいた。
チェーンではないこの店は、8人掛けのカウンター席と、4人掛けのテーブル席が2つあるだけの小さな店だ。
隣の席との間隔も狭いせいか、お店の中にはサラリーマンの姿しか見えない。
そんな中で二人はカウンター席の端に座り、枝豆、タコの唐揚げ、焼鳥を肴にビールを飲んでいた。
「仕事は相変わらず忙しい?」
「まーな。
ルートセールスって言ったって毎日飛び回って客の要望聞いたり、ライバル会社の動きを聞いたりさ。
そういう金井は?」
「ウチもおんなじ。取引先から無理な納期言われたりね」
仕事の話をしてビールが酎ハイに変わる頃、鈴木が「ところでさ」と切り出した。
「話したいことがあるんだろ?
お前から飲みに行こうって誘ってくるなんて、スゲー久しぶりじゃん?」
「まあ、な」
「どうした?
恋人とケンカでもして口も聞いてもらえないとか?」
「それで済めば良かったんだけどな。
フラれたんだよ、俺」
揶揄い口調で笑う鈴木に透は溜め息を吐いてみせた。
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