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「大丈夫?」
ふいに頭の上から低い声が響いた。
「えっ……?」
見上げると、背の高いスーツ姿の男性が私を見下ろしていた。
端正な顔立ち、というのはこういう人のことを言うのだろうか? 男性なのに、綺麗という言葉が当てはまるような人だった。思わず見惚れてしまうくらいに……。
その視線の先を確認するように男性の顔を見たけれど、その優しそうな瞳は確かに私の顔を見つめていた。
「大丈夫?」
もう一度そう言うと、男性は柔らかく美しい笑顔を向けて少し間を開けて私の座っているベンチに腰掛けた。
「……な、なにが……ですか?」
初対面の人と……しかも男性と、気軽に話すことに慣れていない私は、ぎこちなく声が掠れたことに気付いて、恥ずかしくなって俯いた。
「ごめん、驚かせちゃったね。キミ、酷い顔色しているよ。具合悪いんじゃない?」
通りすがりの人に心配されるほど、酷い顔をしていたのか。
そう思うとまた恥ずかしくて、私は両頬に手を添えて「だ、大丈夫です」と答えた。
「なら、いいけど。食べない?」
男性は徐に持っていたビニール袋の中から、ベーグルを1つ出した。
「ここのベーグル、上手いんだけど、結構腹に溜まるんだよな。買いすぎちゃったんだ」
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