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保健室のドアが開き、どす黒い声が耳に入り背筋が凍る。
「私の授業をサボって女の子といちゃついてるとはいい度胸だな。」
「や、やだなぁ先生。そんな怖い顔してたらシワが出来ちゃいますよ?」
「え? なに? 聞こえなかったから近づいて、もっぺん言ってみろゴラァ!」
「ぐはあ!」
先生の1発をみぞおちにもろに食らう。
「た、体罰反対……」
「ムカついたから殴ったのは体罰じゃないのでセーフ。」
「理不尽だ……」
そう言うと先生は一旦息をつく。
「まあ冗談はさておき」
冗談?いや、マジで痛いんだけど。
「おまえらがつるんでるとは意外だな。」
「はい。曲家くんには返しきれないような借りがあるんです。ね?」
「い、いや……」
やばいどうしよう目が合うたびに可愛い。
「星宮は誰にでも話しかけそうだが、曲家は星宮らへんとは絶対に会話しないと思ってたんだがな。」
「先生それ遠回しに俺の顔面ディスってますか?」
「いや違うさ。曲家の考え方的に星宮は自分とは真逆で交わりのない存在って思うんじゃないかと思ったのさ。」
……! 思い出した。星宮鈴華、昨日赤也が言ってた学年人気ナンバーワン女子!?
「先生大丈夫です。曲家くんはすごくいい人だって私は知ってるからーーー!」
「……そうか。できればこれからも曲家とつるんでやってくれな。さあ、授業に行くぞ曲家。今日はみんな大好き抜き打ちテストだ。」
「痛い痛い、先生痛い。首根っこ掴まないで。」
「んー? こうしないと君は逃げるだろう?」
「俺はお風呂嫌いのペットですか。」
なされるがまま保健室から連れ出される俺に彼女は後ろから声をかけた。
「曲家くん! またね。」
「あ、ま、また……!」
手を振る彼女を見ると胸が締め付けられた。その理由、その気持ちにはとっくに気づいてしまっていた。
俺はやってしまった。学校1の嫌われ者が学年1人気の女の子に恋をしてしまったのだーーー。
だがこの時の俺はそれ以外の全てに気がついていなかった。
あの日踏み出した一歩はどこの世界につながっていたのかも。
この恋物語がどんな道を辿り、どんな結末を迎えるのかもーーー。
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