涙の海

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「ねえ、知ってる?」 「何を?」 「地球には昔、巨人がいたんだって」 「へーぇ」 「それで、巨人同士で戦争になって、戦い抜いた戦士一人が生き残ったんだ」 「へー…」 「最愛の妻も子どもも死んで、巨人の中でも逞しかったその戦士は、家族を守れなかった事を悔やんで、毎日泣き続けたんだって。とめどなく流れる涙は、やがて海となりました」 「…なるほど。だから海の水はしょっぱいんだな」  俺の彼女は、この手の話が好きだ。  正直、俺はこういう話には大して興味も感じないのだが、いい加減に相槌を打つと彼女の機嫌が悪くなるので、ご機嫌を取ろうとしたり顔で頷いた。  そんな俺を、彼女がジッと見つめてくる。え、何?無表情で怖いんですけど。今までのあからさまな機嫌の悪さと何かが違う。  なんとか取り繕おうと口を開きかけた俺に、彼女から容赦ない言葉が叩きつけられる。 「あのさあ、何でそれ言っちゃうワケ?分かってても知らないフリして感心するとかできないの?だいたいあんたって、いっつも私の話に興味なさげでマジムカツクんですけど。ほんっとサイテー」 「えっ、ちょっと待っ」  最後まで言う前に、バッチーン!という景気いい音が響いた。  その後、こっぴどくフラれた俺の涙で海ができましたとさ。
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