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今日も、あの時間がやってくる。
壁に掛けられた時計を見上げ、義孝はため息を吐いた……、否、呑み込んだ。
それをしてしまう事によって、自分から負のエネルギーが流れ出るのを恐れたからだ。
ーー今日は来ないんじゃないか?
そんな楽観的な考えが頭を過る。ーーが、すぐさまフルフルと頭を振って、その考えを否定した。
来る、きっと来る。
テレビから抜け出して来る、有名な幽霊を彷彿とさせる音楽が脳内に流れた。
「そろそろ時間ね。……もう来るかしら?」
背後から楽しそうな声が掛けられ、思わず毒吐きそうになるのをぐっと堪えた。
「……まさか。いい加減飽きもするに決まってますよ。」
ーー嘘。来るに決まってる。
同僚にあたる青木さんが、俺の後ろを通ってカウンター隣の席へと腰を下ろした。
「そうかしら。おばさんの楽しみなのに。」
「やめて下さい。」
そう言って、今度こそため息を吐いた。
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