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ここは、県内にある国立図書館。 県庁所在地とは名ばかりの、寂れた地方都市の典型のような場所(まち)だ。 それでも人口は34万人近くいて、毎日セコセコと生活を送っている。 当然自分もその中の1人で、毎日毎日同じことの繰り返し。 そんな平穏な日常に辟易していた頃が懐かしい。 「こんにちは。」 その、低く落ち着いた声が、ザワリと義孝の心臓を撫でた。 「あらっ、いらっしゃい。もう来る頃かしらって思ってたのよ。」 その人物の来館に、青木さんが嬉しそうに声を上げた。 五十歳(いそじ)になったばかりという、既に妙齢とは到底言えない立派なご婦人が、まるで女子高生のように浮き足立つ。 「いつもお邪魔して、申し訳ありません。」 短くカットされた黒髪のつむじが見えるほど頭を下げると、今度はサッと顔を上げ真っ直ぐに彼女を見つめる。
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