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しかし、ここには外界との通信手段は一切遮断されている。
自治区は狭い集落で仕切られていて、高い壁に囲まれた建物が点在し、各集落では
かならずゲートキーパーが居るのだ。ほぼ刑務所と一緒だ。
しかも逃げおおせたところで、俺たちに生活の保障はない。
俺たちはここで飼われるしかないのだ。
それも仕方ない。
でも、あの忌まわしい物だけは見たくない。
老人ばかりなんだから、当然死人は出る。
「あぁ、そろそろ山田さんが、ええ塩梅になっとるんじゃないかね?」
「おお、そうじゃった。もうええころじゃのう。」
「きょうはご馳走じゃのう。シシシ。」
俺は身の毛がよだった。
老人たちはぞろぞろと室へ向かう。
山は蛋白源が少ないのだ。
先日亡くなった、山田のおじいちゃんの干し肉をとりこむためだ。
俺はまだ、一度も人を口にしたことがない。
人間として終わるような気がするから。
かえるや蛇を食うほうが、まだマシだ。
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