第1章

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毎日帰宅する時間を狙ったかのようにかかってくる電話。 それは、受け持っているクラスの生徒の1人で、不登校の男子生徒の母からだ。 今日はいきなり涙声で始まった。 「片瀬先生。たすけて下さい!」 この生徒は夏休み明けから、 不登校になった。 理由ははっきりしない。 だからこそ母親はなすすべがなく、 やり場のない不安や怒りを 毎日こうして私に電話してくることで 紛らわせている気がする。 最初は親身になって聞いていた私も、 冬が来る頃には疲弊してきた。 もはや、親身どころの話ではない。 電話は曜日を問わずかかってくる。 スモーカー被害にでも遭っている気分だ。 年中無休。24時間体制。 こんなの、おかしい。 親身に話を聞けなくなり、やがて着信に怯えるようになった。
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