第1章

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宗介に会えるまでの日を カウントダウンしながら過ごすと 3日はあっという間に過ぎた。 土曜日は私も午前中部活がある。 顧問をしているのは陸上部。 顧問は2人制で、もう1人は 50を越えたベテランの本田先生だ。 私も陸上部の顧問は 宗介と一緒だった学校でも、やっていたが この本田先生は 陸上のスペシャリスト。 だから私は生徒と一緒のメニューをこなしたり、タイムを計ったりする程度の マネージャー的立ち位置。 「片瀬先生、そろそろ上がろうかと思うから。」 本田先生がタイムをとる私の後ろに立ち 記録表を手に取りながら言った。 「はーい。」 本田先生は、生徒にも私にも優しくて みんなから慕われている。 本田先生には、 「はーい」 なんて返事をしても大丈夫だ。 「お、新田、自己新かー。」 「そうなんです!来週の大会楽しみですよね!」 「だなあ。あいつ最近調子良いよなあ、公私ともに。」 「え?もしかして本田先生、新田に彼女できたこと知ってるんですか??」 「あー、やっぱりなあ。俺の勘は当たったな」 と本田先生は顎をスリスリ撫でながら ニヤニヤした。 「あー!私にかまかけたんですね?? ひどい!新田には黙っててくださいよ。私がバラしたって!」 「バラしたも何も、下校あんだけ彼女としてりゃ、誰でも分かるさ~」 本田先生はハハハと高らかに笑う。 生徒と歳が近い方に入る私には 色々な情報が入る。 その情報が時に生徒指導で役立つこともあるから、 安易に情報を漏らして生徒の信頼を失ってはいけない。 情報が入らなくなってしまう。 「中学生にしてはませてるよなあ。あいつらホント。ま、青春だ青春。」 本田先生はまた笑いながら歩き出し、 「部長ー、そろそろダウンに入れー」 と部長に指示を出した。 校舎の時計を見るとまだ10時だ。 本田先生の部活は、朝8時半に始まり 大体10時には終わる。 そんな短い時間の練習でも 生徒はちゃんと力をつけていて、 今年はリレーで全国大会出場を目指すレベルだ。 部活が終われば後は自分の時間。 宗介に会うまで時間はたっぷりある。 帰りながら、ふと大きなお風呂に入りたくなり、地元の高級ホテルへ向かう。 日帰り入浴して、 もしエステが空いてたらオイルトリートメントしてもらおう。
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