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「えっ……と……」
女性が不機嫌にならないように断るにはどうしたら良いのか、彼女は悩んだ。いつもは適当に受け流せば分かる相手ばかりだったから、ここまで強く出られて軽くパニックにもなっていた。
どうしよう、このままだと娘を抱っこしてしまう。
止められたベビーカーでスヤスヤと眠る我が子を見ながら、絶対に触れさせてはいけないと、母親の勘が警鐘を鳴らす。
有無を言わせない迫力に気圧されそうになった時、隣に居たママ友が急にベビーカーのハンドルを強引に握った。
足止めしていた女性を避けるように一度ベビーカーをバックさせ、ママ友は「グッスリ寝てるから、ごめんなさいね」と足早にベビーカーを押して進んだのだ。
ハッと我に帰った彼女はそのママ友に続いた。
もう1人のママ友は、更にその先にいる長男たちにピッタリと寄り添って歩いてくれていた。
ベビーカーに追いつくと、ママ友は「振り向いちゃだめだよ」と短く告げた。
子供達には気付かれないように、3人の母親は全身で背後の女性を意識しながら歩き、ママ友のマンションに着く前にその女性は消えていた。
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