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妖は、もちろん普通の人には見えない。
それらの類を見えるかどうかは、霊気の質によるそうだ。三神のような特別な血筋でもない限り、普通の人間には見えるものではない。
(もちろん、例外もあるのだが)
普通の人には、見えないということは、俺はそれだけ異常な存在ということ。
妖との鬼ごっこやかくれんぼでは出来るだけ平常心を装う必要がある。
周りの人には見えないのだから、1人で暴れている危ない人として認知されてしまう。
例え話し掛けられても、追いかけて来ても、しれっとしていなくてはならない。
そもそも認知しないようにするのが大切なのだ。
こちらから認知してしまうと、ロックオンされてしまう。
平気じゃないのに、平気なふりをずっとしてきたためか、成長するにつれて、人前で感情があまり表に出なくなってしまった。
(心の中ではこんなにおしゃべりなのにな…)
切ない、とても切ない。
大人数相手に鬼ごっこするのは、さすがに骨が折れる。
しかも命がけの鬼ごっこだ。
逃げるのはいつも、俺一人だけ。
理不尽すぎる。
今は、鷹丸の高校に通っているため、追いかけられても実際に手を出されることは、まずない。
まあ、それも弱い妖ならばの話なのだが。
そもそも、あまり高等妖には遭遇するものではない。
鷹丸には、無月様を祀る無月神社があり、両側にはそれぞれ強い妖が主人である山がある。
縄張り的にも、高等妖はわざわざ寄ってこないことが多いのだ。
(俺、将来…引きこもりになりそう…)
たとえ、成人しても鷹丸から出られないのだから。
(なにが、三神家だよ…)
青春を謳歌できない運命なんて、なかったことになればいいのに。
(ちくしょう、
俺にも…のほほんさせやがれ…)
こんな血筋、さっさと滅びろ!!
そんな悪態をつきながら、本日も神巫服を身にまとい、神巫バイトをきっちりこなしてしまう俺なのであった。
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