2- 鬼岩と紅の記憶。

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ずっとずっと幼い頃。 6歳ぐらいだっただろうか。 その頃はまだ、自分の身がいずれ危険にさらされるとは、知らされていなかった。 子供の発している「明るすぎる霊気」は、邪気を近寄らせない。 たとえ妖が近づいても、手を出すことは出来ない。 「明るすぎる霊気」は彼らにとって、【毒】だからだ。 それにもかかわらず、俺は基本的に神社から出ることが許されていなかった。 【箱入り娘】として、神社にとらえられ、神巫として育てられた。 6歳なんて、遊びたい年頃。 それが嫌で嫌で、仕方がなかった。 高台にある神社からは、鷹丸のこどもたちが外で遊んでいるのがよく見えたから余計に。 我慢できるわけもなく、俺は中々の頻度で神社から抜け出し、鷹丸市内の公園や駄菓子屋、鷹丸外では鬼岩山や天狗山に遊びに行っていた。 要するに中々の問題児だったわけだが。 一族の掟で閉じ込められて育てられていたので、神社から抜け出すのは一苦労だったが、親の目を盗んで抜け出すこと自体が遊びだった。 勿論、バレたらものすごく怒られるのだが。 (うん、問題児だな。確実に。) そんな問題児な俺は、あの日… 【彼】に出会ったのだ。 それは蜃気楼が見えそうなくらいの猛暑日だった。 退屈で仕方なく、いつものように神社を抜け出した。 言いつけを破り鷹丸の外にまで出て、鬼岩山のお社の近くの小川に遊びに行った。お社の周りはとても涼しかったのでお気に入りの場所だったのだ。 下駄を脱ぎ小川に足を浸すと冷たくて気持ち良かった。 社の前には苔の生えた大きな緑の岩があり、いつも何かに見えるような気がしていた。 「猫岩」と勝手に名付け腰掛けたり寝転んだりして遊んでいた。 いつものように遊んでいたら【彼】に話しかけられたのだ。 「君…どこから来たん」 どこか風変わりな関西弁を話す、炎のような紅い髪をした少年、それが【彼】だった。 自分も含め親族が和服を着ていることが多かったので彼の古風な服装に違和感は感じなかった。 どちらかと言えば燃えるような紅い髪のほうが気になった。綺麗だと思った。
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