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「たばこ、1本くれませんか。」
「お前、いくつだ?」
「17です。」
「じゃあだめだ。」
「ケチですね。」
「普通警察に頼むかね?」
「いいじゃないですか。おじさん、あんまり仕事熱心な感じじゃないですし。」
「馬鹿言え。俺より仕事熱心な奴はなかなかいねぇよ。」
「そうですか。嫌なことがあるとたばこが吸いたくなるものだと聞いたので、吸ってみるなら今かなと思ったんですけど。」
嫌なこと、ねぇ。俺は面倒な事件にイラついているが、彼女も彼氏が倒れて、さらにそれが原因不明となれば嫌な気持ちにもなるだろう。だからといって未成年に喫煙をさせるほど落ちぶれてはいないが。
そうだ、そういえば彼女は海の家で泣きながら「私のせいで」と言っていたな。もしかすると、原因不明の出血の原因を、知っているんじゃないのか?
「彼が倒れているとき、『私のせいで』と言ってたな。」
「えぇ、言いましたよ。」
「あれ、理由を聞いてもいいか?」
「そうですね……。このまま放っていたら、あまりにも大事になってしまいそうなので。嫌ですけど、話します。」
そう言ったあと彼女は少し俯く。彼女の頬が少し赤いのは夕日のせいだろうか。
「話す前に、2つ程約束してもらえますか。」
「するかどうかは約束の内容次第だ。」
「では1つ目は、これから私が話すことをことを他の人に決して言わない事です。もちろん警察の方にも。私も、あと彼も、大事になるのは望んでないはずなので。」
「俺だって警察だぞ?君を逮捕することだってできる。」
「おじさんはそこまで仕事熱心な方では無さそうなので、逆に信用出来ます。仕事が増えるのを嫌がりそうですしね。」
「まぁ良いだろう、それで2つ目は?」
「2つ目は、私の話を聞いても絶対に笑わない事です。」
「笑える話なのか?」
「笑えない話ですよ。私にとっては、ですけどね。」
「わかった、約束しよう。」
「では。」
彼女は長めにすぅっ、と息を息を吸うと覚悟を決めたようにぽつりぽつりと話し始めた。
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