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「そうか、じゃあ彼が目覚めたら伝えておいてくれ。警察じゃ刺殺、撲殺なんて珍しくも無いが、悩殺されそうになって警察にお世話になったのはお前が初めてだってな」
「笑えない冗談ですね。」
「いいや、笑える冗談だったよ。」
彼女は最後に胸にパンチをした後、病院へと去っていった。
以上が俺がこの街の警察官になってから経験した、もっとも下らない事件だ。
この後大病院に患者を移そうとする医者と、急に事件の捜査をやめた俺を不審に思う後輩を誤魔化すのに大きな労力を要したが、それは今語るべきではないだろう。
あれから例の事件のカップルは俺が口外していないか気になるのか、ちょくちょく交番に顔を出すようになった。
後輩は未だに事件の真相を知りたがっていて、お茶やお菓子で釣ろうとしているがことごとく失敗している。
大した仕事も無いこの交番の現状だが、俺は平和なこの街が1番好きなのだから、きっと何も問題は無いだろう。
今日もこの交番の電話は、鳴らない。
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