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「えーと、すみません。彼が被害者の男性で間違いはないですか?」
後輩の質問に野次馬がコクコクとうなずく。
「では、この中に彼が被害に遭う瞬間を目撃した方は?」
今度は全員首を横に振った。
後輩が俺の耳に口を近づけ小声で話しかけてくる。
「目撃者はいないみたいですね……やっぱり熱中症とかですかね?どうします?先輩。」
「とりあえずお前は周りに聞き込み行ってこい。俺は女の子から話を聞くのと、救急車が来た時の対応するから。」
「分かりました」と言って後輩が砂浜を走って行く。
周りを囲っていた野次馬も「ほら散れ散れ」と手で追い払い、海の家の中には店主と俺と泣きじゃくる女の子と倒れた男の子だけになった。
横たわる男の子の体を触れずにひとしきり眺めてみたが、出血したりしている様子は無い。
顔色は悪く、意識も戻らないが今自分が男の子にしてやれることは無さそうだし、下手に動かしてもマズそうなのでまずは女の子に質問することにした。
「あー、っと泣いてるところ悪いけど、話を聞かせて貰えないかな。」
「……」
「彼がなんで倒れたのかわかるかい?」
「……私が、悪いんです。」
「それは喧嘩をしたり、ふざけあっていて事故でこうなってしまったとか、そういうこと?」
「……」
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