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この小さな街に救急車は無いため、最寄りの小さな病院に連絡をしたらしい。男の子が担がれ車に乗せられる様子を彼女はハラハラとした様子で見守っている。恋人を気づかう姿勢がなんともいじらしくなって、医者に女の子も一緒に連れて行って貰えないかと頼むと、二つ返事で了承してくれた。
申し訳なさそうにこちらに頭を下げる彼女に、気にすることは無いと手だけをひらひらと振ってこたえる。
医者に後でそちらの病院に向かうという旨を伝え、車を見送った。
さて、こっちも後輩を回収して病院に向かうとしよう。
病院に向かう途中、後輩が聞き込みの結果を話してくれた。
「できる限りたくさんの人に聞いてみたんですけど、被害者が倒れる瞬間を目撃した人はいませんでした。」
「そうか。」
「倒れたあとなら見た人がたくさんいたんですけどね……そりゃ女の子が泣きながら男の子を引きずってたら目立ちますもんね。」
「すまん、もう1回ちゃんと説明して貰えるか。」
「えぇと、女の子が泣きながら男の子を海から引きずり上げる様子を見ていた方が何名かいました。」
「なるほど、大方男が溺れたのを彼女が助けたんだろうな。」
「それで彼女は溺れているのに気がつけなかった自分を責めて『私のせいで』と言ったわけですね。」
「それか、熱中症で倒れたかだな。どちらにせよ事件性は無いはずだ。まったく……こんな事で警察を呼ばないでもらいたいな。」
「いいじゃないですか、暇なんですし。街の人の安全を守るのが警察の役割なんですから、喜んで働きましょうよ。」
「若いな、お前は……」
街の人の安全を守る、ね。こんな田舎じゃなかったらもっと締まるんだけどなぁ、などと考えながら車を走らせる。
たばこを吸おうとすると、これから病院に行くんですからと後輩に止められた。
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