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病院に着くとすぐに医者が飛び出すように出迎えてくれた。
1階建てでベッドが4つ程しかないが、これでもこの街で一番大きな病院だ。医者は50歳程の髭を蓄えた小さな医者と、その妻でもある看護婦が2人で経営している。
自分も骨折をした際に世話になったが、小さくても頼りになる良い病院だと思う。
「お待ちしておりましたよ!!」
「お出迎えどうも。」
医者の態度というものは病院の大きさに比例するのだろうか。その小さな病院と同調するように医者の物腰が異様に低く、大病院の尊大な医者よりもよっぽどこの医者の方が好きだった。
「来ていただいて早々で申し訳ないんですけども、あの患者さんはどのような経緯でこちらに運ばれてきたんでしょうか?」
「なにか気になることでも?」
次に続く一言で、この事件はあらぬ方向に大きく動き始める。
「えぇ、あの患者さんは急激に血を失ったことによるショック状態で搬送されてきたんですよ。」
後輩が驚いた様子で医者に食ってかかる。
「まさか!!彼の体に傷がある様子はありませんでしたよ!?」
「えぇ、えぇ、そのまさかです。私の方でも調べさせてもらったんですけども、体に外傷はございませんでした。」
「そんな……」
「幸い命に別状はありませんでしたがね。もう輸血も済ませておりますので、直に目を覚ますと思われますよ。」
命に関わるものでは無いと聞いて、俺も後輩もほっと胸をなで下ろす。聞いたところ、彼女に連絡先を聞いて家族への連絡も済ませてあるそうだ。
医者は来客用の部屋へ俺たちを案内しお茶を出したあと、検査結果の書類を持ってくると言って去っていった。
後輩が何故か辺りを気にするように小声で話しかけてくる。
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