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「空谷先生はあんなお人だから、自分のことは話しちゃくれないだろうけどね。しかし助かっているんだよ。先生の文字はそこいらの筆工より遥かに達者でね。清書の手間が要らない。そのまま版下にできるんだ。うちのような小さな問屋には得難いお人なんだよ」
私は、自分がほめられたように嬉しくなりました。
「先生によろしく伝えておくれよ。ああ、半月もすれば珍しい書物が入るから、それをお届けするからね」
私の知らない旦那さまがここにもいました。
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