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最近この黙らせ方を使い過ぎていたようだ。癖とまで言われてしまうのだから相当なのだろう。もっと日常的に行っていこう、そうしよう。癖、とすら思えない程に。
「じゃあもう二度としないわ」
「そういう底意地の悪いところは嫌いだ」
「あら、なら最後に」
もう一度、そんな言葉を吐く口を塞いだ。
一度目も二度目も蜂蜜の甘い味がした。
「......二度としないって、言ったくせに」
「ふふ、今私は、二度と、と言ったのよ。一度なら嘘にならないわ」
「あぁもう!わかった。ありがと、嬉しいよ。物で貰うのは初めてだし、大切にする」
「えぇ、お願い。私と一緒に居るときは、なるべく着けてくれると嬉しいわ」
「それは、時計を見る手間が省けるから」
「いいえ、貴女の顔を見る手間が省けるから」
「その台詞、一生忘れないから」
「ごめんなさい、少し意地悪したくなっ......」
貴女からするのは珍しい。
それほど嬉しかったのか、それとも本当に怒っているのか。
なんにせよ、そのどちらだったとしても私は喜んでしまうから駄目ね。
だって、三度目は味がわからないんですもの。
「......仕返し」
「その仕返しを期待してもっとしたくなるから、あまりお勧めはしないわね」
「はぁ、君は本当に良い性格してるよ......」
「あら、褒められてしまったわ、嬉しい」
「本気で言ってるなら、君は皮肉って言葉を調べるといいよ」
「貴女の皮と肉なら、喜んで食べますけれど」
「あぁ、もう!本当に良い性格してるね!本気で褒めてるよ!」
「ふふ、お褒めに預かり光栄ですわ」
首に着いた異物を撫でる貴女を眺めて、そのチョーカーの本当の意味を知る私はほくそ笑む。
「あのさ、思ったんだけど」
「はぁい」
「この時計、時間合ってる?ボタンも何も付いてないけど」
「いいえ、全く」
「えぇ……本当に意味無くない、それ」
「ふふ、いいのよ、それで。それでこそ意味があるの。時計なのに、時間を示さない事にね」
「んぅ、よくわかんないけど……」
「まぁ、とっても正直に言えば、時計はただの飾りなの。でも、可愛いじゃない?首に時計が着いてるって」
「わかるような、わからないような」
「いいのよ、それで」
「んー、まぁいっか。ありがと、嬉しいよ」
「ふふ、どういたしまして」
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