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はっとして目を見開いた。まだ薄暗い窓の向こうから小鳥の声が聞こえていた。
首筋をつたう嫌な汗を袖で拭う。身体中が酷くべとついて不快だった。ベッドの上で身を起こして勢いよく毛布を剥ぐと、寝間着の股の部分がぐっしょりと濡れていた。
酷い夢だった。しばらくみないと思って安心していたのに、いい歳して夢精までするなんて。
黒檀色の短い髪をくしゃくしゃと掻き乱し、セルジュは低く唸る。
少年の頃に体験したあの出来事は、初めて味わう快感とともに、セルジュの心を、プライドを酷く傷つけた。
自分より四つも年下の少女に良いように弄ばれ、情けない声を聞かれ、射精する瞬間までしっかりと見届けられて。少女の顔にあらん限りの精液をぶちまけて。あまりの羞恥に耐えきれず、茫然とする少女を置き去りにして、セルジュはその場から逃げ出したのだ。
幼馴染みであり婚約者でもあった少女とは、それ以来会っていない。あまりのショックで屋敷に引き籠り、半年近く少女からの便りを無視し続けていたところ、あっさりと婚約を破棄されたからだ。
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