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手が届きそうな、すぐそこにいるのに…
見えない壁の向こうにいるみたいに、手も声も届かない。
叫んだ。
声が枯れるまで。
喉が潰れて痛くなるまで。
ずっと…
でも、あのヒトには何も届かない、聞こえない。
あとほんのちょっと。
手を伸ばせば届く距離。
なのに、何かに阻まれて…
あのヒトはこっちを見ないで、気づきもしないまま行ってしまう。
追いかけたいのに、前みたいにやっぱり足が動かない。
「…ねぇ、なんなのその夢?」
「さぁ?」
あたしだって、たまに見るこの夢がなんなのかなんてわからないわよ。
2週間前に見た夢と繋がっているんだろうか。
「ことごとく欲求不満なのね」
「ヤ、そうじゃないと思うんだけど」
「で?あれからだいぶ経つけど、見つけたの?」
「いいえ、どこにもいません」
毎日、とはいかないけど、あの場所近辺を通る度キョロキョロと探してみたりしてみた。
だけど、やっぱりというべきか、もちろんいなくて。
外回りの途中とか出張とか、そんな感じであそこにいたのかもしれない。
そう思うと、会うことは二度とないって…
忘れる、どころかだんだん忘れられなくなっている、この状況。
ティセアにはバカにされたけど。
現実を見ろ、って。
わかってるんだけどなぁ。
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