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白い砂浜、青い海。太陽はさんさんと輝き、海は太陽の光を浴びて宝石のように輝いていた。
「海の家、そこだから。二階の部屋に荷物置いてきちゃって」
「わかりました」
親戚の人にそう声をかけられ、返事をしたあと車を出てから何も声を出さない転校生に視線を向けた。
転校生は、ただ静かに海を眺めていた。胸元をギュッと握りしめて彼は小さく呟く。
「これが……海?」
「そうだよ、初めての地球の海はどう?」
「…………とても美しいです。うらやましいくらいに」
ザザン、ザザン、と波の音に目をつむり、耳をすます。故郷の月を思い出しているのか、彼は静かに涙をながした。
「二人ともー! はやく荷物を置いちゃって」
「はーい! いくぞ」
「……はい」
なかなか来ない俺たちを心配したのか、呼びにくる親戚に返事をした俺は転校生の腕を掴むと海の家へとむかった。
海の家の手伝いは、最初こそ戸惑いはしたけれど六日もやると小慣れたものだった。転校生は、すぐにコツを掴んだみたいで一日目にして親戚にとても気に入られたようだった。
時間が経つのは早いもので、最終日の夕方。店にいた最後のお客を見送ると店内は、いっきにガラリと人気がなくなった。
「お疲れ様。一週間、ほんとうにありがとう」
親戚の人が、そう言ってテーブルの上にかき氷を二つ置いた。いちごのシロップがかかった赤いかき氷とブルーハワイのシロップがかかった青いかき氷。
「二人ともよく頑張ってくれたから、よかったら食べて」
「わぁー! ありがとうございます」
「……ありがとうございます」
嬉々として椅子に座る俺と戸惑いながらも向かい側に転校生が座る。その姿を見届けると、親戚の人は厨房の中に戻っていった。
「どっち食べる?」
「どっちって……これ、食べ物なんですか?」
マジマジとかき氷を見つめる転校生に、俺は吹き出し笑う。目の前にあったいちごのかき氷をスプーンですくって食べてみせる。
「ひぇー、つめてー! ほら、食べてみろよ」
俺の言葉に転校生は頷くと、青い氷をすくい上げ、ゆっくりと口の中へと運んだ。
「ひっ、つめたい……」
「夏にはこの冷たさがいいよな」
「そうですね……不思議とクセになります」
「だろ?」
その会話をあとに、俺たちは黙々とかき氷を食べた。しゃくしゃくと氷をすくう音と外から鳴り響く波の音だけが聴こえる。
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