ふたりだけの

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 翻弄するつもりで捩じ込んだのに呆気なく主導権を奪い取られて、何も考えられなくなるほどにキスだけでオレを()かした颯真が、唇の感触を確かめるように舌でなぞって、ようやく離れていく。 「ホント、可愛いことするよね」  にこりと笑う顔はオレをからかってるくせに愛しさを隠してなくて、なんだかやっぱり意地が悪い。 「じゃ、あとは姫始めかな」 「……それ、お正月」 「じゃ、初夜ってことで」 「──ッ」  まだ夜じゃないと喚くはずの唇を呆気なく塞がれて、さっき仕掛けられた意地悪なキスよりも優しいくせに柔らかすぎて愛しさが体と心に染み渡るみたいなキスが、オレの全部を蕩けさせるから。  何も考えられなくて颯真の肩にすがりついた自分の指にはまった銀色が目に入ったら。  凄まじい幸せに体を貫かれて、弾けた愛おしさの波に呑まれるしかなかった。
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