ふたりだけの

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「ホント、可愛くて困っちゃうよ」  全然困ってない声が愛おしそうに笑って、零れた涙をもう震えてない指先で拭ってくれる。 「結婚したんだから。このくらいで満たされないで」  にこりと笑った颯真が、オレの左手に自分の左手を絡ませて笑う。 「もっとずっと、いつまでもオレのこと欲しがってて」  ふわ、と優しく微笑った唇が近付いてきて、そっと目を閉じたら 「っ!?」  唇に触れてくると思っていた唇が目尻を掠めて、驚いて目を開けたら、イタズラっ子の顔した颯真がだけど嬉しそうに笑う。 「司の泣き顔、可愛くて好きだけど、泣かせないように頑張るから」 「──っ」 「笑ってて、司。オレ、ホントに……ホントに、それだけで幸せだから」 「わかっ」  わかってるよ、と。  言おうとした唇を颯真が塞いでくるから。  不意打ち続きの颯真に、不意打ちを返すみたいに。  離れていこうとした颯真の頭に手を回して、ぐい、と引き寄せて舌を捩じ込む。 「っ」  驚いた目でオレを見る颯真は、だけど嬉しそうに意地悪に目を細めた。
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