(改訂資料1) 《水滴大陸》の主要5民族(+1)について。

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   それ故に昔語りを始めよう。アトル・アンは神々の嘉(よみ)し給わぬ土地であった。  彼の地に住まう者らが父神なるティアスラァルの正なる嗣子ではなきが故に、彼の地のヒト族の母が、神族の端(はした)にすら加え得ぬ、位低き哀れな水乙女に過ぎなかった故に…  妃神女ネフェルクァイの眷属衆たる上つ時代の力有る者達は誰も、、アトル・アンのさ迷える神の子に導きを与えるものではなく、父神ティアスラァルにした所でが、一時の気粉れによって産み出されたひ弱く力無き者達に、一顧をだに。  アトル・アンはそれ故に冷たく、固く、ヒト族の為に貧しき土地であった。  ヒト族の母なる水乙女の名をアテュイ・イイラ、《嘆きの主》(アテュイラスカ)と呼ぶ。アテュイラはティアスラァルの統べる球の地の、聖なる水を司どる御霊の三千六百九十一番目の最後の娘であったが、そもそもは末の娘こそが母なる全ての水の聖霊の跡目を継ぐべきであるとする、 "水" 族の掟は、上つ時代の気楽な神々の預かり知らぬ処ではあった。  さてこのアテュイラが水乙女たるの資格である純潔を奪われて主神との間に子を生(な)した時、産み出された子供はティアスラァルの重き赤き血筋を濃く受けて、地上に住む者となった。  ティアスラァルによってその子らに投げ与えられた土地がアトル・アンである。  アトル・アンの地を護る神はこの汚れた子らを厭うて間もなく去り、幼いヒト族達は守る者とてなく、冷たく固い大地に捨て置かれる事となった。  ここに水乙女は自らの産みし子らの命運を哀れみて地に寄り沿い、嘆きの声は海の波となりて地を取り囲んだ。これが彼の地をアトル・アンと呼び習わし、母なる者を《嘆きの主(あるじ)》と名付けし、そもそもの初めであった。    
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