奇々怪々な男

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奇々怪々な男

 かつて、日本を震撼させた少年がいた。  未成年でありながら、数十人もの命を奪い、戦後四十三人目となる死刑宣告を受けた少年。  殺害人数もさることながら、この少年の犯罪は、それはそれは異常であり、猟奇的であり、常軌を逸したものであり、一部の犯罪マニアには神とまで崇められる程。  犯罪にある種の美意識を投影した遺体の状況と、細部に至るまで緻密な計算が施された計画性には、芸術とまで語るジャーナリストが現れる程のカリスマ性。  一時、少年は人間ではなく、魑魅魍魎の類いではないかとさえ噂された程、畏怖と尊敬、汚名と好奇心から『犯罪芸術家』と呼ばれていた。  正直、私からすれば、所詮は犯罪者。法を犯し、人々の穏やかな生活と命を奪うような人間を、神などと囃し立て、楽しんでいる人間の気持ちが理解出来ない。  きっとこんな人間とは、解り合うことなど出来ないと思っていた。  あの日までは……。
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